ITストラテジストの過去問を解説!令和4年度(2022年度)春期 午前2(問5)

ソフトウェア技術
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令和4年度ITストラテジスト試験の過去問解説連載です。
この記事では午前2 第5問を解説します。

問5:契約形態に関する問題

ベンダX社に対して、表に示すように要件定義フェーズから運用テストフェーズまでを委託したい。X社との契約に当たって、’情報システム・モデル取引・契約書<第二版>’に照らし、各フェーズの契約形態を整理した。a〜dの契約形態のうち、準委任型が適切であるとされるものはどれか。

ア a, b
イ a, d
ウ b, c
エ b, d



解説

契約形態の違い

準委任契約と請負契約はどちらも法に定められた契約形態の一つです。ITシステム開発においても、ユーザからの開発を受注したり、ベンダ間での作業委託をする場合にも用いられます。契約の主な違いは次のとおりです。

準委任契約は、ある業務を遂行することを約束する契約であり、成果(仕事)の完成責任を負いません。(法律上は、「善良な管理者の注意をもって委任業務を処理する義務」を負います。)
したがって契約上の「納品物」はありませんが、業務遂行したことを明確にするため、業務報告書などの文書を作成して発注者に提出することが多いようです。
納品物がないので、業務遂行の過程や成果物に品質上の問題があっても、契約終了後に発注者がその責任を問うことはできません。

請負契約は、ある成果(仕事)の完成を約束する契約です。
したがって要求される品質水準を満たした「納品物」を納期までに発注者に引き渡す義務があります。また納品物に品質上の問題があった場合には、修正や賠償などの手段によって責任を取らなければなりません(瑕疵担保責任)。
契約時に納品物とその品質水準、納期を明確に定める必要があるので、契約後に納品物を変更をすることはできません。新たな契約を別途結ぶことになります。

また準委任契約と請負契約は両者とも、発注者が直接指揮命令をすることはできません。

情報システム・モデル取引・契約書とは

「情報システム・モデル取引・契約書 第二版」は2020年に経済産業省がITシステム開発にかかわる取引や契約形態のモデルを示した文書です。IPAのサイトにて補足資料含め様々な詳細な文書が公開されています。
第二版の 1. 総論 (4)モデル契約書の主要条項の論点整理 から引用します。

  • 企画段階は、準委任契約とする。企画段階は、ユーザ側の業務要件が具体的に確定しておらず、ユーザ自身にとってもフェーズの開始時点では成果物が具体的に想定できないものであるから、ベンダにとっても成果物の内容を具体的に特定することは通常不可能である。そのため、仕事の完成を目的とし予め成果物の内容が具体的に特定できることを前提とする契約類型である請負には馴染みにくく、準委任が適切と考えられるからである。
  • これに対して、開発段階は実務上、準委任と請負の両方があり得る。請負に馴染むのは、業務に着手する前の段階でベンダにとって成果物の内容が具体的に特定できる場合であるが、内部設計やソフトウェア設計などのフェーズはこうしたことが可能であり、請負で行うことができる。特に論点となっているのは、システム外部設計・内部設計業務及び当該外部設計の妥当性を検証するシステムテスト業務である。システム外部設計とシステムテスト業務はユーザ側の業務要件に関わる部分が多く、その点では準委任に馴染むが、従来の実務では請負で行われている場合も多い。

つまり、品質水準や納期まで含めて具体的に成果物を見積もることが現実的にできるかどうかが、どちらの契約形態とするか判断のポイントと言えます。

 

正解は イ (要件定義フェーズと運用テストフフェーズ) です
平成30年度(2018年度)秋期 応用情報技術者試験午前問66でも出題された過去問です。

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