はじめに
2015年度(平成27年度)の過去問を説いて勉強するエントリ第5弾です。
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今日の問題
出典:平成27年度 秋期 ITストラテジスト試験(ST) 午前2 問18〜問21
IPAの過去問ページで原本を参照できます。
問18:ビジネスの法則や考え方に関する問題
e-ビジネス分野で提唱されているロングテールの考え方を説明したものはどれか。
イ 業界標準を確立した製品・サービスは生産規模が2倍になると生産性が更に向上し、収益が2倍以上になる。
ウ 全体の2割の優良顧客が全体の売上の8割を占め、全商品の上位2割が8割の売上を占める。
エ 利用者が増えるほど、個々の利用者の便益が増加し、その結果、ますます利用者が増えることで寡占化が進む。
解説:ビジネスにおける法則
ロングテールとは、販売数量が少なくても種類が豊富であれば全体の売上は大きくなるという考え方です。したがって多品種少量販売で売上利益を大きく得る「ア」が該当します。
店舗では一般に来客数や在庫量に限りがありますが、e-ビジネス(ネット上での商売)では店舗のように来客数に物理的制約がなく多数の来客が期待できることから、ロングテール商品の取り扱いが有利とされます。
イ:製品の生産規模を増やすと生産にかかる製品あたりのコストが減少し、結果的に生産性が向上する「収穫逓増の法則」の説明です。
製品に限らず、多くのWebサービスではユーザが2倍になってもシステム運用やその人員の費用(固定費)が2倍になるわけではありません。そのため固定費が割安になり、生産性が向上する場合が特にITの世界では見られます。
ウ:「パレートの法則」の説明です。文献や筆者によっては、2:8の法則などと呼んだり、割合が3:7などと主張するケースもあります。つまりは売上や利益の大半をもたらしてくれるのは少数の顧客ということです。だからこそ、そのような顧客は「優良顧客」と呼ばれます。
エ:「市場経済の法則」の説明です。人気の商品やサービスは選ばれ続けることで市場においてより強固になります。
問19:チームメンバの振る舞いに関する問題
リーダーシップを”タスク志向”と”人間関係志向”の強弱で四つの型に分類し、部下の成熟度によって、有効なリーダーシップの型が変化するとしたものはどれか。
イ Y理論
ウ コンピテンシモデル
エ マズローの欲求段階説
解説:マネジメント手法あれこれ
ア:SL理論(Situational Leadership Theory)とは、部下がリーダーシップを発揮するときの行動を習熟度別に4つに分類して効果を高めるための理論です。したがって本設問の正解です。
イ:Y理論とは、性善説に基づいた理論です。マズローの欲求段階説でいう社会的欲求や自己実現欲求を多く持つ人に対して、より良い目標や責任などの「機会を与え」てより高い成果を出させるマネジメント手法として使われます。
Y理論とよく対比されるX理論というものがあります。X理論は性悪説に基づいています。マズローの欲求段階説でいう生理的欲求や安全欲求を多く持つ人に対して、達成できれば報酬を与え、達成できなければ罰を与えるという「命令や強制」によるマネジメント手法として使われます。
ウ:コンピテンシーとは、行動や姿勢のことを意味します。高い成果を継続してあげている人たちのコンピテンシーを分析し、共通点を中心にモデル化したものです。
エ:マズローが提唱した、人間の欲求は次の5段階に分かれており、1段階目が満たされると2段階目を、2段階目が満たされると3段階目を順に求めるという理論です。
・生理的欲求:食事や睡眠など、生命活動を維持する最低限の欲求です。
・安全欲求:肉体的、精神的、また経済的にも安全で安心できる環境で過ごしたいという欲求です。
・社会的欲求:家族や地域コミュニティなど、何らかの社会集団に属して安心感を得たい欲求です。
・承認欲求:集団や社会において自分の能力や実績をより高く評価されたいという欲求です。
・自己実現欲求:理想的な自分になりたいという欲求です。
問20:売上に占める費用の構造に関する問題
A社とB社の比較表から分かる、A社の特徴はどれか。
(単位:億円) | A社 | B社 |
売上高 | 1,000 | 1,000 |
変動費 | 500 | 800 |
固定費 | 400 | 100 |
営業利益 | 100 | 100 |
イ 限界利益率が低い。
ウ 損益分岐点が低い。
エ 不況時にも、売上高の減少が大きな損失に結びつかず不況抵抗力は強い。
解説
ア:売上高が増加したとき、より大きな利益を残すためには支出の増加を抑える必要があります。売上が増えるにつれて増える支出は変動費なので、変動費が小さいA社のほうが有利です。したがってアが正解です。
イ:限界利益率とは、売上に占める限界利益の割合です。限界利益とは売上から変動費を引いて残る額、つまり売上が増えたときに一緒に増える利益のことです。したがって 限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上 なので、A社が0.5、B社が0.2となります。
ウ:損益分岐点とは、初めて利益を残すことができる売上高のことです。厳密には限界利益と固定費が等しくなる売上高です。損益分岐点は 固定費 ÷ { 1 – (変動費 ÷ 売上) } で求めることができます。
したがってA社の損益分岐点は800億円、B社は500億円です。
エ:一般に不況時には固定費が少ないほうが抵抗力が強いとされます。したがってB社のほうがより強い不況抵抗力があるといえます。
問21:投資の評価手法に関する問題
EVA(経済的付加価値)の算出方法を説明したものはどれか。
イ 投資額に対してどれだけ利益を生み出しているかを求める。
ウ 投資額を回収するのに必要な期間(年数)を求める。
エ 利益から資本費用(投資額×資本コスト)を引いて金額を求める。
解説
ア:内部収益率(Internal Rate of Return)の説明です。IRRは令和元年度試験にも出題されています。
イ:投資利益率(Return On Investment)の説明です。投資額に対してどれだけの利益を出せたかを表す指標で、高いほど効率よく投資活動ができているといえます。
ウ:回収期間法の説明です。目標とする期間よりも短い期間であれば投資実行に前向きな材料となりますし、目標よりも長ければ中止も含めて再検討をすることになります。
エ:経済的付加価値(Economic Value Added)の説明ですので、正解です。ある一定期間に出した利益はそのための投資額に対してどうだったかを評価する手法です。具体的な計算方法は選択肢の通りです。
今日はここまで!
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