はじめに
ITストラテジストの過去問を解いて勉強するエントリの第2弾です。
過去のエントリはこちらの通り。
過去問の原本はIPAの過去問ページで参照してください。
今日の回答と解説
令和元年度秋期 ITストラテジスト試験 午前2の問6から問10を解きます。
問6:企業買収の方法に関する問題
Buyoutとは企業買収のことです。
LBO(Leveraged BuyOut)とは買収先企業の資産やキャッシュを担保として金融機関等から資金を調達することで、少ない手元資金でより大きな企業を買収する手法です。
返済の原資は買収先の資産やキャッシュとなることもあり、買収する側の手元資金が少なくて済むという特徴があります。
見方によっては、自社が借りたものでもない借金の返済を自社の資産使ってやらされるという恐ろしい話ですが
これを踏まえて選択肢を吟味します。
ア:一定期間内に一定の価格で株式を買い取る手法なので、TOB(Takeover Bid)です。
株式の買取自体は市場外でおこないますので、「株式市場で」という修飾語句にひっかかっるかもしれません。
イ:経営陣や事業責任者が自社株を買い取る手法なので、MBO(Management Buyout)です。
ウ:人を送って経営に参画するという(投資ファンドでよく見られる)手法なので、Hands Onです。
エ:買収先企業の資産を担保にした資金調達をするので、LBOがあてはまります。
問7:経営戦略のフレームワークに関する問題
アンゾフの成長マトリクスとは、ある2軸を定めてものごとを4象限にわけて(位置づけて)分析する手法のひとつで、「市場」と「製品」という観点から新規と既存という軸で区分します。
この問題の他の選択肢の文章がそのままよく知られたフレームワークの説明文になっています。じっくり読んでみましょう。
ア:SWOT分析のことです。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4点に分類することで、自社のおかれた環境を分析するときに使われるものです。
イ:バランス・スコアカード(BSC)のことです。財務、顧客、ビジネスプロセス、学習と成長という視点で分類し、企業のビジョンとそれを達成するための戦略を考えるときに使われるものです。
ウ:アンゾフの成長マトリクスです。市場浸透、市場拡大、製品開発、多角化に分類して、事業戦略の方向性を考えるときに使われます。
エ:プロダクトライフサイクルです。企業や事業のライフサイクルとも呼ばれることがあります。
プロダクトが生まれてからクローズするまでの4段階に分類し、事業戦略を検討するときに使われるものです。
問8:ブランド戦略に関する問題
ブランド拡張とは、既存のある商品で確立されたブランドを他の商品やカテゴリにも展開することです。新規にブランドを立ち上げるよりも投資が少なくすむメリットがあります。
ブランド拡張の例としては次のようなものがあります。
- フィットネスのライザップが英会話教室を開く
- メーカーのソニーが銀行や損保などの金融事業を展開する
- 自動車メーカーのホンダがバイクや船のエンジンを販売する
この設問の選択肢の文章が、それぞれブランド戦略に関する考え方の説明文になっているのでじっくり見ていきます。
ア:市場セグメントを変更するので、ブランドリポジショニングです。
イ:既存のブランドを他の商品に展開するので、ブランド拡張です。
ウ:ブランド名称を変更するので、ブランド変更です。
エ:同一のカテゴリで複数のブランドを使い分けるので、マルチブランド戦略の説明です。
問9:価格設定手法に関する問題
ターゲット(目標)とかリターン(収益)って言ってるので知識なくても正解できてしまう気がする
ア:実勢価格設定とは、市場や競合の価格設定を重視して自社商品の価格設定をすることです。広く浸透している手法といえます。
イ:需要価格設定とは、市場セグメントによって同じ商品でも価格に差をつけ、利益を最大化することを狙った手法です。
同じ商品でも売る相手や場所、時間、販売ルート等によって差をつけることです。
- 学割やシニア割
- 大型連休中の繁忙期料金と平日日中の閑散期料金
- 街中の自販機と山頂の自販機
- 直販と販売代理店
ウ:ターゲットリターン価格設定は目標収益法とも呼び、名前の通り目標とするROI(Return On Investment)から逆算して導出された販売価格です。
経営計画上の目標値がベースになった考え方といえます。
エ:知覚価値価格設定とは、顧客の知覚する価値(カスタマーバリュー)に基づいて設定される価格のことです。
かなり平たく言うと、ターゲットはこの商品にこのくらいなら払うだろう、という考え方で価格設定をする方法です。
問10:価格戦略に関する問題
新規参入時の価格設定手法は大きく「スキミング価格戦略」と「ペネトレーション価格戦略」に分けられます。
スキミング(Skimming)価格戦略とは、主に富裕層のような「高くても買う」層をターゲットにした戦略です。上澄みの表面をすくい取る(skimming)ようなイメージです。
参入初期から利益率を高くできる余地がある一方で、需要が価格(安さ)によって決まる商品では厳しいです。
ペネトレーション(Penetration)価格戦略とは、一気に市場シェアを獲得して事業・商品を軌道に乗せるための戦略です。硬い地盤に一気に食い込む(penetrate)ようなイメージです。
初期に資本を集中投下し中長期的にコスト(原価)低減をすること前提で投資回収するので、資本力のある企業にしかできない戦略ともいえます。
これを踏まえて、選択肢を吟味します。
ア:高価格でも購入する層をターゲットとしているので、スキミングに関する記述といえます。
イ:まずは利益より市場シェアを狙いに行くので、ペネトレーションに関する記述といえます。
ウ、エ:価格戦略として知られるものですが、名前がついているのかどうかはわかりません。。。
今日はここまで!
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